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森の声を聞く達人 松村岳史【達人紹介#04】
2020-11-03
森の声を聞く達人 松村岳史【達人紹介#04】

MANAVIVA!で体験を提供する個性豊かな達人たちを紹介する「達人紹介」。
第4回目の達人は、静岡県森林環境教育指導者の資格を持ち、MANAVIVA!の体験プログラム”高山アドベンチャー”と”高山ナイトアドベンチャー”で、子ども達に森のガイドを行っている、UNITEDの松村岳史(まつむらたかし)さんをご紹介します。

❚高山市民の森ってこんなところ

”高山アドベンチャー”の舞台である高山市民の森は、静岡駅から車で約40分程の、豊かな自然に囲まれた水見色地区にあります。
到着後、松村さんと合流し、さっそく森の中を案内して頂くことに!
歩いて森へ移動していると、「あ…!見てください」と、松村さん。
さっそく何かを見つけたようです!

あ!ほんとだ!こちらを見ている動物がいます!
あれは何という動物なのでしょうか?松村さんに聞くと、動物の名前は「カモシカ」で、森に来るとたまに遭遇するとのこと。
日常では会うことのない野生の動物に出会うことができ、わくわくしますね!

さて、そのまま歩いて森の中へと進んでいきます。

森の中に入ると、高くまっすぐ空へ向かって伸びた木々、生き生きとした植物や、どこからともなく聞こえる虫や鳥たちの声が響き、森のエネルギーを感じます。
静岡にこんな素敵な森があったんだ…。
そう思いながら歩いていると、
「辻さん、これを見てみて下さい!」と、松村さん。
また何かを発見をしたようです。松村さんの示す方を見てみると、

あ、切り株の上に小さな植物が生えていますね。
この植物は、「ヒノキの木の赤ちゃん」だそうです。
いま森の中にある大きくて立派な杉の木も、何十年も前はこんなに小さかったのですね。人間と同じように年を重ねて徐々に大きくなっていく木々を想像し、森が積み重ねてきた時間を感じることができました。

森をさらに進んでいくと、「高山の池」という名の池を見つけました。
池の水面に森の木々が映って、とてもきれいです!
この池には赤いトンボが飛んでいて、池の中にはおたまじゃくしなどの生き物も住んでいました。
また、池の周辺では”カナヘビ”にも出会うことができました。

この森には、本当にたくさんの生き物が住んでいますね!
さて、そんな素敵な「高山市民の森」を舞台に体験を提供する松村さん。
どうしてここで体験を始めようと思ったのでしょうか?

❚森と人は関わりながら生きていける

もともと、学生時代からエコツーリズムに携わっていた松村さん。2016年頃には海外でパーマカルチャー(※)を学んだ経験もあり、幅広い知識を活かしながら、静岡では富士山の山岳ガイドや周辺のエコツアーのガイドとして活躍をされていました。

※パーマカルチャー
”パーマネント(永続性)と農業(アグリカルチャー)、そして文化(カルチャー)を組み合わせた言葉で、永続可能な農業をもとに永続可能な文化、即ち、人と自然が共に豊かになるような関係を築いていくためのデザイン手法。ーーPERMACULTURE CENTER JAPANから抜粋”

とあるきっかけで水見色地区で行われていたイベントを手伝うことになり、その際に高山市民の森に出会います。そして、この森に魅力を感じ、ここでガイドを始めることにしたそうです。
「自分は富士山ガイドの方の活動で、富士の樹海の森ツアーをやったりもしているのですが、この高山市民の森は、樹海の森のような原生林とは違って、”人間と関わりながらも、共生する豊かな森”です。スギやヒノキは、もともとは人間が投資して植えたものですが、現代では格安で輸入木材が手に入るようになったため需要が減り、手入れがされなくなってしまった森が多くあります。手入れがされないと、生態系が崩れ、土が劣化して砂漠のようになるため、最終的に土砂崩れが起きてしまったりします。人間が手を加えた自然はよくないという考え方もありますが、そうじゃなくて、この高山市民の森のように、自然と人間はちゃんと共生できると、僕はそう思います。」と、松村さんはこの森について語ります。

こうした魅力ある場所を、身近な自然として地域の子ども達にもっと楽しんでほしいと話す松村さん。
実際に松村さんのツアーにはどんなお子さんが参加されているのでしょうか?松村さんに伺ってみました。
「そうですね、先日のナイトアドベンチャーではお母さんと女の子が来ました。女の子は最初は全然やる気がない様子でしたが、始まるにつれ徐々に元気になり、最終的には斜面をかけ登るほどテンションが上がっていました。普段あまり行かないんですけど、その日は森のコンディションもよく、山頂まで行きました。夜景もきれいに見えたし、星もよく見えて、カモシカにも2匹会えました。女の子もすごく楽しそうに体験して帰ってくれて、とても印象に残っています。あとは、虫が大好きで何の虫か全部答えることができる子とか、子どもよりも大人の方が感覚が研ぎ澄まされていることもあったりして、本当にいろんな方が体験に来るので、どれも思い出に残っていますね」とのこと。

同じ場所でありながら、森は毎回違った顔を見せ、参加者もそれぞれ違った感性を持った方が来る。この二度とないシチュエーションを、松村さん自身も楽しみながら体験を実施しているようでした。

❚多様であることの豊かさと価値に気付く

最後に、体験を通じて子供たちに感じてもらいたいことを伺うと、
「高山市民の森のいちばんの魅力って、”多様な豊さ”だなと思います。いろんな生物がいて、生態系や循環があって。参加する側も、子どもの目線でしか発見できないものがあったり、感覚が研ぎ澄まされた大人しか発見できないこともあったりして、それぞれ見ているものが違って、多様で豊かですよね。言葉でいくら多様性とか言ってもわからないと思いますが、こういった体験で”多様であることの豊かさや価値”に気付くきっかけになればいいなと思います」と、松村さんは体験に対する想いを伝えてくださいました。

松村さんは、自然の魅力を人々に伝えることに留まらず、現在は自然を守る活動にも積極的に取り組み始めているそうです。
松村さんの今後の活躍にも注目です!

(撮影・文/辻 芹華)
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