FEATURES
特集記事
染織の達人 稲垣有里さん【達人紹介#02】
2020-09-29
染織の達人 稲垣有里さん【達人紹介#02】

MANAVIVA!で体験を提供する個性豊かな達人たちを紹介する「達人紹介」。
第2回目の達人は、静岡市にある”ユトリ・アート&クラフト”で染織や手芸の体験を提供する稲垣有里(いながきゆり)さんをご紹介します。

❚まさに染めと織りの達人!技の数々

稲垣さんの体験ができる場所”ユトリ・アート&クラフト”は、静岡駅から徒歩5分程の街中にあります。お店は地下街にあるのですが、お店の外観が一面ガラス張りで、中の様子がよく見える、開放的な明るい雰囲気のお店です。お店の中に入ると、本日ご紹介する”染織の達人”稲垣さんがいらっしゃいました。早速、店内を紹介して下さるとのこと。
稲垣さん、本日はよろしくお願いします!

お店に入ってまず目を引くのは、ずらーっとお店の奥まで並んだカラフルな糸の数々。よく見ると、色や太さ、手触りも異なっており、糸にもそれぞれの個性があるようです。この糸は、手芸だけでなく、機織りをする際にも使用するとのこと。確かに、店内にはいくつもの機織り機があります。実際に、稲垣さんに機織りをするところを見せて頂けることになりました。

機織り機の前に立つと、さっそく慣れた手つきで準備を始める稲垣さん。

機織りをしたことがない私から見ると、機織り機はすごく複雑な構造に見えますが…。さすが達人です。あれこれ組み立てたり、結んだり、手際よく準備を進めていきます。
そして、あっという間に機織り機で糸を織り始めました。

よく見ると、両手を使って糸を左右に移動させながら、足で機織り機を動かしているようです。織る度に「がしゃん・がしゃん」とリズム良く音がして、まるで楽器のよう。こうして糸を織り、布となっていくのですね。
自分が着る衣服の、成り立ちを想像することができました。

さて、機織りを終えると、店内のキッチンに向かった稲垣さん。手芸のお店なのに、キッチン・・・?一体何に使うのでしょうか?

なるほど。このキッチンで、草木染めを行っているのですね!
この日は、ヤシャブシという植物を染める作業をしていました。すでに植物から色が抽出され、染料はとても鮮やかな色をしています。そして、この染料に布を浸していきます。

しかし、この作業だけで終わりではありません。この後、別の容器に水と鉄の粉を入れ、その液に先ほどの布を浸し、色の変化を見極めながら、染めの作業を続けます。粉を入れた瞬間の化学反応による色の変化は、まるで理科の実験のようで驚きました。

こうして色の変化を予測・コントロールしながら、布を染めていくそう。これぞ、達人技です。

数々の染織の技を見せて下さった稲垣さん。
そもそもなぜ、染織を始められたのでしょうか?お話しを伺ってみました。

❚染織に出会い、達人になるまで

「染織に触れたきっかけはおそらく、自分では記憶もないほど幼い頃。祖母がアート盆栽をやっていて、その水で何か染めたり、色を混ぜたり、色水遊びをしていたことだと思います。でもそんなことは自分では全然覚えていなくて。自身の中での大きなきっかけは高校生の頃です」と話し始めた稲垣さん。

稲垣さんは中高生時代、運動が大好きで部活に熱中するスポーツ少女だったそう。しかし、高校の部活を引退しそろそろ進路を決める頃、たまたま学校帰りに通った家具屋さんで、とっても素敵なタペストリーに出会います。「普通なら、その素敵なタペストリーを”買いたい!”と思うでしょ?でも私は、そのタペストリーを”作ってみたい!”と思ったんです。」と話す稲垣さん。その後、そのタペストリーについて調べ、それが「型染め」という手法でつくられていること、そして美術大学に行けばその技を学べることを知り、卒業後に美術大学に進むことを決心します。

それまで、美術大学に入るための勉強はしていなかったそうですが、熱心に勉強に励み、見事美術大学に合格。在学中は一通りの染織の実技を学んだ後、草木染めを専門に勉強、作品づくりに没頭した学生時代を過ごしたそうです。卒業後は、主に草木染めを用いた着物の制作に励み、デンマーク日本大使館で個展を開いたり、静岡市文化奨励賞そして静岡県文化奨励賞を受賞するなど、活躍を続けてきました。
2015年には、アフリカ・ルワンダに渡航。現地の女性の就労支援のために機織りの技術を教えるプロジェクトを遂行しました。

現地での稲垣さんのミッションは、バナナの繊維を加工して製品化すること。言葉も通じない中、数を正確に数えることから教え始め、繊維を糸にする方法、機織り機の使い方や、製品化のためのアイディア出し等、ひとつずつ課題を解決しながら、プロジェクトを完遂し帰国した稲垣さん。この出来事は、今まで自身やってきたことが人のためになった嬉しさや、自信にもつながったといいます。

その後、自身のお店”ユトリ・アート&クラフト”を開いた稲垣さん。
どうしてお店を持って、染織と手芸を人に教えていこうと思ったのでしょうか?

❚ものづくりを通して、人と人がつながる喜び

稲垣さんは元々、”自分で製造して売る”ことをメインとしていましたが、活動を続けるうちに、ワークショップの講師として呼ばれるなど、”人に教える”機会も多くなったそうです。そして、”自分でつくる”とは違った、”教えることで人に喜んでもらうこと”に、やりがいや喜びを感じるようになります。また、ちょうどその頃に”モノ”消費から”コト”消費へと時代が変化していることもあり、ワークショップに対する確かな需要も感じていました。
そしてついに、人に教える場所=お店を開くことを決めたといいます。
老若男女、ものづくりが好きな人同士が繋がり、楽しい気持ちを共有したり、自分の可能性や気づきのきっかけになったりする、明るくて前向きな場所。それが稲垣さんの目指すお店の姿です。

最後に、ものづくりを通して、子ども達に伝えたいことは?と稲垣さんに聞くと、「超・長期的視野の後継者育成だと思っています。ものづくりを通して、”毛糸って何から出来ているんだろう?”とか、”では羊は何を食べて、どんなところで育っているのかな?”のように、自分が興味のあることを掘り下げることでものの成り立ちを知ったり、実際に自分で体験して学んだりして、どんどん可能性を広げて行って欲しいと思う。MANAVIVA!もまさにそうですよね。そういった小さい頃の楽しかった記憶が、大人になってからの仕事につながればいいなと思う。」と話してくださいました。
稲垣さんは今後も、ユトリが”地域にとっての手芸部”のような、人が集まるコミュニティとなるよう、活動をどんどん広げていくそうです!
稲垣さんは、これからも進み続けます!

(撮影・文/辻 芹華)

▶染織の達人 稲垣さんの体験プログラムはこちら

こどもデザインスタジオ-Tシャツ編-

こどもデザインスタジオ-機織り編-